オレは葵のことで無我夢中になり過ぎてうっかりしていた。
オレは葵を抱きしめながらチラッと横を見た。
「りょ……遼祐……」
オレと葵は固まったまま、ただ黙って遼祐のことを見ていた。
「……どうしたんだよ、二人して。まるでこの世のものじゃないようなものを見る顔でオレのことを見て」
「……あっ……いや……ごめん……」
「大丈夫だよ。なんとなくわかっていたから」
「えっ……?」
オレと葵は驚き過ぎて黙ったまま顔を見合わせた。
「……いや……何ていうか……前に葵くんの入学祝いで葵くんと会ったとき、葵くんが隼翔に接している様子で、なんとなく葵くんは隼翔のことを兄としてではない、別の気持ちがあるんじゃないかなって思って」
えっ……⁉ 遼祐は、そこまで葵の気持ちに……?
でも、なんで遼祐は気付いたんだろう……。
葵は、人前……特に母さんや義父さんや姉ちゃん、友達や知っている人の前ではオレへの気持ちを隠しているはずなのに、一体、葵のどういう接し方で……?