「うん、たぶん」
「たぶん?」
「うん……オレ、まだ絶叫マシンに乗ったことがないんだ」
「そうなのか」
「うん」
「……乗ってみるか?」
葵に訊く太一。
「えっ……」
少しだけ驚いた葵。
「どうする?」
さらに訊く太一。
「えっと……」
葵の声が少し迷っている感じに聞こえた。
オレは葵の方を見た。
やっぱり葵は少し迷っている様子だった。
オレが葵のことを見ていたら葵がオレの視線に気付いた。
そしてオレの視線に気付いた葵もオレの方を見た。
葵は初めての絶叫マシンに乗ろうかどうかを迷っている。
そして迷っている葵はオレの方を見続けている。
オレも葵のことを見続けた。
オレは絶叫マシンに乗ろうかどうかを迷っている葵に、なんて声をかけたらいいのか考えた。
考えて……。
「無理しなくてもいいんだぞ、葵。絶叫マシンに乗ることは葵にとって初めてのことなんだから、無理そうならやめておけばいいし、大丈夫そうなら挑戦してみてもいい。とにかく無理だけはしなくていい」
オレは、ありきたりの言葉しか出なかった。
「……隼翔兄、ありがとう」
葵……。