「本当? 隼翔と同じことを思っていたなんて嬉しい」
「オレもだ」
つぼみが大きくなった桜の木を見ながら歩いていたら、あっという間に美術館に着いた。
館内に入ると葵の顔つきが一気に変わった。
絵画展を観に行ったときもそうだったけど、葵は絵画などの芸術鑑賞をするとき、その世界に入り込む。
そして一つ一つの芸術品を丁寧に鑑賞する。
絵画展を観に行ったときと同じ、オレはそんな葵のことも、とても魅力的に感じる。
じっくりと時間をかけて芸術鑑賞をしたオレと葵。
……って、実はオレは真剣な眼差しで芸術鑑賞をしている葵の魅力に気を取られていて芸術鑑賞どころではなかった。
そろそろ美術館を出ようということになり、美術館を出たオレと葵。
腹が減ってきたと思ったら、そろそろ昼ごはんを食べる時間になっていた。
「葵、そろそろ腹減らないか」
「うん、お腹空いたね」
「どこで食べる?」
「うん……」
「葵が行きたい店でいいんだぞ」
「う~ん……」
「どうした? なにも遠慮しなくてもいいんだぞ」
「うん……」
葵は、さっきから『うん』とか『う~ん』としか言わない。なにか言いにくいことでもあるのか……?