オレは葵の手を掴んで、なるべく人がいないところに葵を連れていこうと思った。

 葵が「隼翔、どこに連れてくの?」と言っていたのが聞こえたけど、オレはそのまま葵の手を引いて歩き続けた。

 そして葵を連れていったところは植物園内の穴場スポット。

 他の場所から観るのもすごくきれいだけど、ここから観る景色は植物園内で最高の美しさ。

 そしてオレは、その絶景の光に包まれながら葵のことを抱きしめた。


「……隼翔……」


「……葵……ありがとう……」


「オレ、隼翔にお礼言われること何もしてないよ」


「オレ、本当に嬉しかったんだ。あの日、葵がオレと一緒の高校に行きたいって言ってくれて。でも、それと同時に葵はもっと上の高校を目指せるのに本当にオレと一緒の高校に行ってもいいのかと心配になった。だけど今、改めて葵の気持ちを聞いて、たとえ、たった一年間だけでもオレもやっぱり葵と一緒に一緒の高校で高校生活を送りたいと思った。迷わずそう思えるようになったのも、葵がそう言ってくれたおかげだ。だから本当にありがとう、葵」