葵の指先がオレの手の甲に少しだけ触れた。
オレは葵の方を見た。
葵は真っ直ぐスクリーンの方を見ていた。
そんな葵のことを見ていてオレは葵の手を握ることを簡単に諦めてしまった自分を後悔した。オレは何をしているんだ、と。
葵はこんなにも素直に自分の気持ちを行動に出してくれている。
それなのにオレは……。
それにオレと葵が座っている席は一番後ろの端。
その席に座っているのに、なぜ葵の手を握ることくらいできないのか。
……葵……。
オレは、オレの手の甲に触れている葵の指先を……指先だけではなく葵の手をしっかり握りしめた。
葵の手を握りしめたオレは葵の方を見た。
すると葵もオレの方を見ていた。
そして葵は笑顔を見せ、またスクリーンの方を見た。
オレもほっとしながらスクリーンの方を見た。
そしてオレと葵は、そのままスクリーンを見続けていた。
映画を観終わってオレと葵は昼ごはんを食べにファミレスに行った。
店内に入り、店員の人がオレと葵を窓際の席に案内した。
オレと葵は席に座り、メニューを見た。