「隼翔、今度はオレ、美術館に行きたい」
「……同じだろ?」
「違うよ、全然。オレ、絵画鑑賞も好きだけど、それ以外の芸術鑑賞も好きなの。だから、ねっ、行こ、隼翔」
……かわいい……。
ここで今すぐに葵のことを抱きしめたい。
でも、ここは公衆の面前。
……ダメだ……オレ……ダメだ……こらえろ……。
「……隼翔?」
葵がオレの顔を覗き込んだ。
「……なんでもない……。今度行こうな、美術館」
「うん‼ ありがとう、隼翔」
オレは葵の無邪気な笑顔にものすごく照れてしまった。
「わざわざ礼なんかいいよ」
オレは照れくさかったからか、少しぶっきらぼうな言い方になってしまった。
「ううん、ありがとうって言いたいの。本当にありがとう」
「葵……」
「……ねぇ、そろそろお腹空かない? ご飯食べに行こ」
葵はオレの手を引っ張った。
そしてご飯を食べに、あのときのあの店に行くことにした。
前に葵と二人で映画を観に行ったときに昼ごはんを食べたあの店だ。
でも、あのときとは状況が違う。
あのときは、まだオレと葵は義理の兄と弟としてだった。
……だけど……今回は……恋……人……としてあの店に行く。