姉ちゃんは、葵がもらうチョコレートのほとんどが本命だと思っているみたいだ。


「何でそんなことわかるの?」


 そう訊く葵。


「わかるよー、同じ女としてね」


 と、姉ちゃん。


「そうなんだ」


 シンプルにそう言う、葵。


 あれだけモテるけど、葵にとっては、女子たちから渡されるチョコレートのことは全く興味がないように見える。

 ……なんか、もったいない。


 あと、葵にはどうやらファンクラブがあるらしい。


 いつだったか、オレが家に着いたとき、ファンクラブの会員と名乗る女の子から、「葵くんに渡しておいてもらえますか」と言われ、手紙を預かったこともあった。

 それを葵に渡したら、葵はとても冷めた感じで手紙を受けっとっていたのを覚えている。

 本当にクールだよな、葵は。


「じゃあ、葵は気になる子とかはいないの?」


「特にいないよ」


 葵はあんなにモテるのに、葵自身は本当に好きな人はいないのだろうか……。

 まぁ、そんなことオレが気にすることではないけど…………だよな、なんでオレがそんなことを気にしているんだ……?

 葵が誰を好きになろうとオレには全く関係ないのに…………。