今、葵が名前を出した将輝さん。

 将輝さんは姉ちゃんの彼氏。

 姉ちゃんと将輝さんは同じ大学で同級生。

 ちなみに高校も同じだった。


 姉ちゃんと将輝さんが付き合いだしたのは、大学に入ってからだったと思う。


「将輝? うん、元気だよ。今週末も会う約束をしているの」


「仲が良いね」


「まぁね。……葵は? 付き合ってる子とかいないの?」


 え……葵に付き合っている子……?

 な……何を訊いているんだ、姉ちゃんは……。

 やめてくれ、そんなことを訊くのは…………あれ? なんでオレ、そんなことを思うんだ……?


「付き合ってる子なんていないよ」


 そうか、付き合っている子いないんだ…………って、なんでオレは、ほっとしているんだ……?


「そうなんだ。葵、モテるのに」


「そんなことないよ」


「ううん、モテるよ。だってバレンタインデーのときに、いっぱいチョコレートもらってたでしょ」


「ただの義理チョコだよ」


 葵は先輩、後輩、同級生問わずよくモテる。

 バレンタインデーのときには家にまでチョコレートを渡しにくる女子たちもいるくらいだ。


「そうとは限らないわよ。きっとほとんどが本命よ」