……なんと度胸があるというか、葵はこういうことに全く動じない。

 オレは男同士でこういう感じの店の中にいるのは少し抵抗がある。

 ……でも、葵は嬉しそうだ。

 葵の嬉しそうな顔を見るとオレも嬉しくなる。

 だから、この店でよかったんだと思う。


 店員さんに案内され、席に座ったオレと葵。

 注文も済ませて、少ししたらランチがきた。


「このランチ、美味しい。どう? 隼翔兄。美味しい?」


「ああ、美味いよ」


「この店にしてよかったでしょ?」


「ああ、そうだな」


 葵も喜んでくれていることだし、結果オーライかな。


 そして、昼食を済ませたオレと葵は、映画館へ向かった。


 映画館に着いて、それから映画を観終わるまでの時間があっという間に感じた。

 やっぱり楽しいと思うことは、時間が過ぎるのが早いなと思った。





 映画を観終わった帰り道、満開の桜の木の道をオレと葵はゆっくりと歩いている。


「隼翔兄、桜きれいだね」


「ああ」


「……でも、あっという間に散ってしまう。だから切ない気持ちにもなる」


「……そうだな」


 オレはそう言った後、葵の顔を見た。

 葵の表情は、一見、普通に見えるけど、どことなく寂し気な雰囲気もあった。