不思議なことに、さっきまで家に帰ろうとしても足が動かなかったのに、今は一歩、また一歩と前へ進むことができる。


「隼翔兄、お腹空いたね」


 葵は普通に話しかけてくれる。


「……ああ」


 オレもできる限り普通に返事をした。


 ……なんでだろう……。

 葵と二人きりになると……胸が…………。


「じゃあ、家までオレと隼翔兄のどちらが早く着くか競争ね」


 葵は無邪気にそう言った。

 オレはまだ何も言っていないのに葵は勢いよく飛び出した。

 飛び出してすぐ葵は後ろを振り返りオレの方を見て「隼翔兄、早く」と呼びかけた。

 オレは飛び出した葵を目で追いながら「葵、ちょっと待って」と言って葵を追いかけた。


 ……これでいいのかな……?

 こんな感じで葵といつまでもずっと…………。


 そうしたらオレのモヤモヤとした気持ちは自然に消えていく……。


 このまま葵と本当の兄弟以上に仲の良い義兄弟でいられたら…………。


 オレはそう願わずにはいられなかった…………。