どうしてオレがここにいることがわかった……?
「……風だよ。さっき隼翔兄と通話しているときに微かに聞こえてきたんだ。この風の音……そうだ、時々、隼翔兄と来るあの思い出の場所だ。そう気付いたんだ」
葵も感じていたんだ。
この空間に吹き込む風は特別な……何か不思議な力が宿っている……そんなふうに思わせてくれるということを……。
そして葵は見事にその音を聞きあてた。
「……すごいな、葵は……」
オレは葵の聴力に感心した。
「……なんで、コンビニに買いたいものがあるって噓をついたの?」
葵の表情は……少し寂し気な感じだった。
……葵にそんな顔をさせてしまった……。
オレは葵に噓をついたことを後悔した。
「……ごめん……悪気はないんだ……」
……言えない……言いたくない……。
オレの今の心のモヤモヤを……。
そのモヤモヤを振り払いたくて、ただひたすら歩き続けたことを。
そして気付いたらオレと葵の思い出の場所に来ていたということを……。
「……帰ろう、隼翔兄」
葵はオレが言いたがらないことを察したのか、これ以上、訊いてこなかった。
「……ああ」