太一は、オレが梓に呼ばれたことが相当羨ましいらしい。

 ……確かにオレじゃなくても太一がいるのに……なぜ?





 そして慌ただしい(?)始業式が終わって家に帰った。


「隼翔兄、おかえり」


 すでに葵が帰っていた。


「ただいま、葵」


「隼翔兄、着替えたらすぐに出るでしょ? 昼ごはんは向こうに着いてからでいいよね?」


「ああ」


 今日は、葵と二人で映画を観に行く約束をしている。

 この年頃で弟と二人で出かけるのは世間では珍しいかもしれないけど、オレと葵にとっては普通のこと。


「隼翔兄は何が食べたい?」


「何でもいいよ」


「じゃあ、行ってみたいところがあるんだけど、そこでいい?」


「ああ」


「隼翔兄と二人で出かけるの久々だよね。最近、お互いのスケジュールが合わなかったから」


「そうだな。……といっても、先月に一度出かけてるけどな」


「先月に一度出かけてるって言うけど、今まではもっと隼翔兄と一緒に出かけてた
よ」


「今までって言うけど、それ、オレが中学生までの話だろ? もう二年前じゃないか」


「そうかもしれないけど……」