梓と話が終わって教室に入り、席に戻ったオレを待ち受けていたのは……。


「梓、何の用だった?」


 予想通りの太一の質問。


「別に大したことじゃないよ」


「『大したことじゃない』ってなんだよ」


「いや、そういうつもりじゃ……」


「いいなぁ~、梓に必要とされて」


 ……必要……とされているのか? 今の梓とのやりとりが?


「別にそういうのじゃないよ」


 オレは、太一を少しでも落ち着かせようとした。


「あぁ~、何でオレじゃダメなんだ、梓~」


 オレの言い方が足りなかったのか、太一は、なかなか落ち着きを取り戻さなかった。


 ……というか、そもそもオレは梓から必要とされているとか、そういうのではないと思うけど……。


「だから、そういうのじゃないって」


 もう一度言うオレ。


「お前はいいよ、梓に選ばれた方だから」


 ……選ばれた……って……。


「だから、大した用じゃなかったんだって」


 一体、何回言えば……。


「大した用じゃなくても、オレは梓に必要とされたい‼」


 こ……これは重症だ……。


「……あ、そう」


 オレは、そう言うしかなかった。