俺はまた一息深呼吸で元の自分を取り戻し
レジに立った。







しかしこれがまた。
全く集中出来ない。



その原因は、


紛れもなく目の前で手を顎にのせてこちらをじっと見上げてくるこいつ。





「話があんなら、早く言ってくんない」

そんな見つめられたら
さすがの俺もやりづらいんだわ。

さすがの俺ってどんな俺だよ



「いや、…さきいか買う女子ってどう思う」


ただの暇潰しならやめて欲しい。
一応監視カメラついてるから。

俺がここで油売ってたとかバレたら
まぁ店長仏並みに優しいから大丈夫だろうけど
もし万が一それで咎められたら
俺もうバイトするとこねぇし。


「ねぇ、どう思う」

渋谷美里ってもっと奥ゆかしい系かと思ってたわ。
こんな強引な奴、どうやって勘違いすんだよ

「良いんじゃね?」


「テキトーばっか言う」



テキトーばっかって
ちゃんと話したのこれが初めてだろ
何すげぇ知ってる奴の言い方なんだよ。
それに俺はいつも真剣だわ。



「いや、俺も好きだし」


さきいか、な?さきいかがだからな?

「あ、うん…」


おいおい変な感じにすんな

さきいかが好きなだけのただの男子だからな
変な空気にして勘違いとかすんなよ、
お前とは違うから俺はさきいかだから(?)





「てか何でいっつも同じ物なの」


あ、マズイ
俺から話しかけた。

これじゃ油売ってたのバレても言い訳できねぇ
俺にも非があるじゃん、



「気付いてたの…?」

何その意外、みたいな顔
気付くだろ普通に



「だってお前毎週同じ物しか買わねぇじゃん」
しかもいつも深夜、付け足して言う





「…いや、それは深夜がさ!私活動的だから」


「コウモリかよ」

私夜行性なんだよね!ってそんなコンビニで大声上げて自慢する事でもないからな?

高校生女子がそんなの自分のアピールポイントにするの、わりとどうかと思うけど。
親心配するぞ。


「ははは、何言ってんだろね」
乾いた笑いでごまかす顔は

まぁ何かかわいそうになる感じ。
なんかちょっと傷つけた顔、
えまって俺のせい?
俺なんか言ったっけ…

あ、コウモリ、まずかった?
コウモリって結構可愛いと俺は思うけどな





いやだから
コウモリが、だからな?
可愛いのはコウモリ、の話だから。

って誰に弁明してんだよ俺。