プシュ。




ビールのプルトップを開ける音が響いた。




ビルの窓灯りより月光が明るくて




時折吹く風が気持ちいい。




優香の部屋のベランダに座って





隣には翔輝がいる。




まだ、夢見てるみたい。




翔輝がいる。




ほんとに…?



何度見ても夢みたいだと思って



話してるのに、何だか…



夢心地な自分がいる・・・




☆☆☆…



『すごいね。


物流の会社なんて』




『全然すごくねえよ。


まだ、全然ペーペーだし


この首締まるの全然


慣れねぇ。』



って、翔輝がシャツの襟元を緩める。



『でも、海外との取引に強いって』



『いろんな国の奴らと


強制的に関わりあったから


ちょっと喋れるだけだし。』



『え。てことは。


海外との取引って、翔輝たちが


してるの?!』




『ん。


大方な。


中国・韓国・英語くらいは


俺も那智もできるから。


スラングだけどな。』



『すごすぎない?』



『全然だ。


立ち上げたの那智だし。』



『えっ。那智くんが社長なの?』



『そ。


アイツもともと


経営とか…


カネ生み出すの?


強いんじゃん。』



えええ?そうなの



『別で講習会の派遣会社もしてるし』


わお。やり手。


ポツリポツリと


2年の空白を埋めるように


話す2人。



『後で、那智も来るって』



『え?ここに?』



 何で?  



『優香の顔見たいんじゃねーの』




 ええぇ?



『ほんとは、もっとちゃんと仕事


成功させてから


会いにくるつもりだったんだ


でも、もういいから、


早く会いに行けって。

 
うるさかったの


那智だよ。


手遅れになったら


どうすんだって。』




そうなの?



那智くんが…



『優香。那智の彼女見たら


ビックリするかも。』



『え?わたしが?』



わたしが知ってるひととか…いる?



『那智が


お前はオンナゴゴロが


わかってないから


優香に振られないように


学べってうるさくて


今、週2で


護身術のインストラクターしてる。』



『え?翔輝が?』



『うん。』



『それって…女の子に?』



『うん?


9割くらい女のひとかな?』




それって。絶対、翔輝目当ての子たちじゃん…。




『…わたしも習おうかなー。


護身術。』



『優香には必要ないじゃん。


おれがいるんだから』



そんなこと言って、



目を覗き込んでくる翔輝。




『ゆうじは、


ちょっと足に麻痺が


残ったけど。


去年できちゃった結婚して


今は彼女の実家ついでる。


地元の八百屋。』



『良かったねぇ』



優香は涙が出そうになった。



『でも、結婚式にはくるって』



『へー。そうなんだ。


だれの?』



ん?って、感じの表情の優香に



『おれたちの。』








『え。



え。


マジ?』