「小僧が生意気に、何を言っておる! わしは、ここの……登紀子さんの料理を楽しみにやってきとるんだ! それなのに、これはなんだ。こんなものが、わしを満足させてくれるとは到底思えん!! ふざけるなっ!!」


 ピシャリと言ってのけた虎之丞の目は、ちょう助に向けられていた。


「登紀子さんが後任に推したじゃと!? こんな小僧に登紀子さんの代わりが務まるわけがなかろう!」


 そもそも虎之丞の怒りの原因は料理に限ったことではない。

 懇意にしていた登紀子さんがいなくなった。

 その事実が、既に認められるものではなかったのだ。

 虎之丞の顔は怒りで赤く染まっていて、目は見開かれて血走っている。

 まさに般若のような顔つきと、嵐のごとく繰り出される怒号に、ちょう助の肩も頼りなく縮こまった。


「アジフライなど、そんな脂っこいもの食いたいなどと思わんわ! 登紀子さんならば、こんな子供騙しのような料理は絶対に出さんかったはずだ! つくもの料理長が聞いて呆れる! わしは貴様の作った料理など絶対に食べん!」


 ふてぶてしく腕を組み、フンッと鼻を鳴らす虎之丞の態度はこれまでになく横暴だ。

 言っていることは子供のワガママにしか聞こえず、花は思わず下唇を噛んだ。