「これ、は……」
しかし、花が料理の説明を始めるより先に、いち早く虎之丞が声を上げた。
「これは一体、どういうことだ!?」
虎之丞の声が震えている。
花は背筋を伸ばしたまま一度だけキュッと唇を噛み締めたが、小さく息を吸い込んでから虎之丞の質問に答えた。
「本日のメインは、活きあじフライでございます」
数々の料理の真ん中には、先日ぽん太とちょう助、花の三人で食べた活きあじフライが置かれている。
加えて胡麻の入ったすり鉢とすりこぎも置いてあるのだが、今回はそれだけではなく──、
「つくもの料理長自慢の一品です。付け合せのソースは三種ご用意させていただきました」
花のその言葉の通り、アジフライのそばには三つの小皿が置いてあった。
「ひとつは、すり胡麻とソースを合わせたもの。ふたつ目は新鮮な卵を使ったタルタルソース。そして三つめは熱海産の新鮮な檸檬を使った特性漬けダレです」
もちろん醤油も置いてあるので、正確には四種の味が楽しめる。
それはここ数日でちょう助が悩みに悩んで作り上げた組み合わせでもあった。
花は味見役として既に四種の味を体験しており、四種四様に楽しめる最高の一品であることを知っていた。