どれだけ急いでいても朝ご飯は抜けなくて、バスケットにいくつかつまれていたゼリー飲料を頬張る。

そして化粧だ。
化粧というものがあるから女性の朝は時間がかかる。といってもそんな大事な過程を抜くわけにもいかず、いつもより時短なメイクをナチュラルに仕上げだ。少し色の濃いリップを引けばそれなりに見えるというものだ。

鏡にうつった自分を見て顔をしかめる。
…どうしてこんな朝に限って寝癖がついているんだろう、私の頭は。

「はぁ」

思わずため息をつきながら、寝癖は車の中でなおせばいいかとブラシを鞄に入れ、駐車場に急いだ。





「桜。頭、寝癖ついてるぞ」

「…わかってます」