そう思った時、そばに置いてあった鞄の中からスマホの着信音が鳴った。
ちょっとごめんと言って席を立ち、スマホの画面を立ち上げてから耳に当てる。


「はい芝波」

『夜にごめんね、砂川です』


砂川さん。芝波プロダクションでいくつかの人気男性アイドルグループをプロデュースしている男性プロデューサーだ。

『芝波さんに見て欲しい子がいるんだけど、明日事務所に寄っていい?』

「あ、もちろんです」

見て欲しい子、か。砂川さん、新しいアイドルの卵を発掘したのかな。
跡取り時代に父の側で仕事をしている時も、芝波さんに見て欲しいと言われて何人かの新人を紹介されたことがある。でもあの時は私は父のおまけだったし、今回とは訳が違う。

…でももう不安がっている場合でもないのだ。
社長の椅子に座った以上、年齢なんてものは言い訳にならない。一生懸命頑張って、父の作り上げたプロダクションを私が守らないと。


『芝波さん、いつなら時間取れる?』

「えっと明日は…ごめんなさい、ちょっと待ってください」

そう言ってスマホを耳から離し、京の方を振り向いて尋ねる。