どうしたんだろうと不思議に思っていると、やがて砂川さんの手が私の髪に伸びた。サラッと軽く髪を触られ、やがてその手が離れる。
「芝波さん、もしかして今日寝坊した?」
髪に触られた意図に気がついてハッとする。
「そういう抜けた感じ、ほんと可愛いよね」
「……!」
(そうだ寝癖付けっぱなしだった!)
遠まわしにそれを指摘され、耳までカァッと赤くなるのを自覚する。
「ははっ、からかってごめんね、つい。
黒瀬君もそんな怖い顔しないで欲しいな」
怖い顔と言われて京の方を振り向くと、確かに怖いというか、強張った表情をしているように思えたが、常にポーカーフェイスな京は大抵いつもそんな顔をしているような気がする。
「俺は別に…」
「相変わらずクールでかっこいいよね黒瀬君は。
恋人とかいるの?」
(えっ)