要領の良い弟は 北陸の国立大学に入学して スムーズに家を出た。

そして今年 北陸の県庁に就職した。

このまま 北陸で結婚すれば ずっと帰ることはないだろう。
 


高校から付属校に通っていた沙織は 家を出るタイミングを失っていた。



結婚すれば スムーズに家を出られる。

でも 彼と結婚すれば 母と同じになると沙織は気付く。

彼と結婚しても 嫌な場所が変わるだけ。
 



そのことに気付いた時 沙織は思い切って彼との別れを決心する。


沙織から別れ話しを切出されて プライドを傷つけられた彼は 口汚く沙織を罵った。

それは沙織の中の ほんの少しの迷いを消してくれた。
 



その頃 度々銀行に来て 沙織に笑顔を投げかける紀之に 沙織は惹かれていた。

でも紀之は 大企業の御曹司だから。

沙織が付き合える相手ではないと思っていたから そっと気持ちに蓋をしていた。