紀之との結婚を 職場で話した沙織には、色々な声が聞こえた。
恐ろしいほどのシンデレラストーリーだから。
嫌味や妬みが飛び交い、沙織を悲しくさせることもあった。
大学の同級生も、沙織の報告に驚きの声を上げる。
「そんな家にお嫁に行って、大丈夫?」
「お金持ちのボンボンでしょう。遊び人で沙織を泣かせるんじゃない?」
“おめでとう”の後に、何か一言、必ず言われて、沙織はため息をつく。
『私は紀之さんを信じたから。』誰に何を言われても、揺るがない自信があった。
都心の高級ホテルでの、盛大な結婚式。
ウエディングドレスは有名ブティックのオーダーで。
大勢の招待客に祝福され、新婚旅行はオーストラリアへ。
結婚式の前に、仕事を辞めた沙織。
新婚旅行から帰ると、穏やかな毎日が始まる。
平日の昼間は、お母様を訪ね買い物やランチをする。
高級な食材を買って手の込んだ料理で紀之を驚かす。
清潔に家を整えて 紀之を待つ沙織を、紀之は 惜しみない愛で包む。