お父様もお母様も謙虚で、穏やかで。
緊張していた沙織を、優しく気使ってくれる。
和やかな雰囲気で、沙織を自然と会話させてくれる。
次第に寛いで、楽しく話す沙織を、温かく見つめて。
こんな素敵なご両親に育てられたから、紀之は素敵な人なのだ。
そう思ったとき、沙織は、とても悲しい気持ちになる。
自分の親を誇れないなんて。所詮、私は、あの両親の子供だから。
でも、そんな両親の嫌な所を、全部知っているから。
自分は絶対に、そうならない。
これから作る家族に、沙織や弟のような思いはさせない。
いつか、子供に自慢してもらえるような親になる。
絶対に。紀之と一緒なら、できると思った。