早く結婚して、家を出たい。 ずっとそう思っていたから。 沙織は家族が嫌いだった。 気難しくて、高圧的な父。 沙織も弟も 父が帰って来ると 自分の部屋に逃げる。 小さなころからずっと。 母は優しいけれど 父との間を取り持ってくれない。 むしろ父の愚痴を 沙織に聞かせる。 父がいると家はしんと静まる。気詰まりで 息苦しくて。 家が大嫌いだった。 杉並区という立地は 一人暮らしをする理由も 見つけられない。