そんな発想は、沙織をどんどん綺麗にしていく。
紀之が恥ずかしくないように。
紀之と出入りする高級な場所に、相応しくなるように。
洋服や持ち物を吟味し、上品な高級感を身に付けていく。
沙織の変化を、紀之はとても喜んだ。
二人の時間を楽しくさせ、沙織を色々な所へ、連れて行ってくれる。
沙織といる時の紀之は、いつも楽しく笑って、寛いでいた。
そっと沙織に甘え、すっかり心を許していた。
週末はドライブ旅行。
紀之は“エクシブめぐり”と言って、会員制リゾートホテルに部屋を取る。
熱海、湯河原、箱根。軽井沢、山中湖、伊豆など。次々と沙織を連れて行く。
夏休みは、紀之に合わせて休暇を取り、バリ島旅行。
ゆったりした田舎のビーチは、二人を安心して解放させてくれた。
人目を気にせずに、外でも寄り添う。
美しく熱い夏に、二人は燃えた。
高級な空間でも見劣りしない沙織に、得意気に微笑んで。
部屋では寛いで、沙織に膝枕を求める。
まだ、言葉では言ってくれないけれど。
紀之に、愛されている自信があったから。沙織は幸せだった。