身支度を整えた沙織に、
 
「今日って何か予定はある?」

少し躊躇しながら、紀之が聞く。
 
「ううん。私は何も。」

紀之の真意がわからずに、沙織は怖々と答える。



沙織の返事を聞いた途端、紀之は満面の笑顔を見せて、
 
「よかった。夜までに帰ればいい?」と聞き返す。
 
「うん。大丈夫。」と沙織が言うと、
 


「よし。俺もシャワーを浴びてくる。今日は、東京見物しようか。」

とニコニコ笑いながら、バスルームに入っていった。
 


『東京見物って。』と微笑みながら、沙織は幸せが溢れていた。

体を許した沙織に 今までよりも優しく、温かな眼差しを向けてくれる紀之。
 


この人は、前の彼とは違う。

出会ったときから感じていたけれど。

信じようとしなかった気持ち。



期待して、傷つくのが怖かったから。

男なんて、みんな同じだと思おうとしていた。
 



この人は、特別な人だ。だから一緒にいたい。

いつか傷つく日がきても。今は一緒にいたい。


沙織は、涙を滲ませながら、二人が過ごしたベッドと整えていた。