沙織の家は、地下鉄の駅から10分足らずの、古い住宅街。

通い慣れた道なのに、紀之と歩くと、違って見える。
 


「あの角から二軒目の家です。」

さすがに家の前までは連れて行けない。

狭い十字路で立ち止まり、沙織は言う。
 



「本当にありがとうございました。ごちそう様でした。」とお辞儀をして。
 
「いいえ。俺も、すごく楽しかったです。次は食事ですよ。」

と控えめに 探るような紀之に、沙織は笑顔で頷く。



紀之は、やっぱり子犬のような目で笑い、駅への道を、引き返して行った。