朝、目を覚ました子供達が“おはよう”と言って 階段を下りてくる。
パジャマ姿に 乱れた髪が とても可愛い。
「絵里ちゃん、壮君、おはよう。お顔を洗ったら、お着替えしてね。」
私は、キッチンから声を掛ける。
全館空調の設置させた室内は どこも快適な温度で。
子供達に とても優しい。
洗面室から戻った二人は、
「パパ。おはよう。」
とソファで新聞を読む智くんに寄り添う。
「おはよう。新しいおうちで、よく眠れたかな。」
智くんは、二人の肩を抱き寄せる。
「絵里加、ぐっすり眠ったよ。」
「壮君も。」二人の元気な声に 微笑む。
「さあ、お着替えして お散歩に行こう。新しい街を 探検しようね。」
智くんに言われて、二人は動きだす。
絵里加は一人で。壮馬には、智くんが少し 手を貸して。
「ママ、髪の毛、結んで。」
着替えが終わると 絵里加は ブラシを持ってくる。
私は、キッチンを離れて 絵里加の髪を整える。
「今日は、どんな風に結ぶ?」
絵里加の後ろで 髪を梳きながら 私は聞く。
「今日はね、二つに結ぶのがいいな。」
娘を持つ母親だけの時間。
私も、母に結んでもらった。
ずっと忘れられない 幸せな時間。
「はい、できた。うん、可愛いね。」
絵里加を立たせて、正面から見てみる。
「ママ、ありがとう。」
絵里加は、ブラシやヘアゴムが入ったかごを ちゃんと元の場所へ戻す。
何も言わなくても、自分で。
「準備はいいかな。行くよ。」
ジャンパーを羽織って、三人は出かけて行く。
楽しそうな笑い声を響かせて。
新しい家での、初めての朝。
子供達は、戸惑うこともなく。自然に受け入れている。