引越し当日 忙しい一日の始まりを 穏やかに迎える。
朝の散歩はお休みして 朝食を終えた子供達を 智くんはお母様に預けに行く。
「このおうちとは 今日でさようなら だから。絵里ちゃんも壮君も ありがとうを言って行こうね。」
智くんは 玄関で靴を履き終えた子供達に言う。
「絵里加 新しいおうちに行っても このおうちの事は 忘れないよ。」
絵里加の言葉に胸が熱くなる。
「そうだね。ちゃんと覚えていようね。」
二人の頭を撫でながら 智くんは言う。
そして子供達は きちんと頭を下げて 大きな声で
「今まで、ありがとう。」と言って出て行った。
私はその様子を 涙汲んで見送る。