深見さんが帰った後で 私は、この部屋に住み始めた日の事を 思い出していた。
幸せ過ぎる不安に 涙を流した日を。
私を抱きしめて 泣かせてくれた智くんを。
もう10年も経つなんて信じられない。
昨日の事のように、覚えていた。
智くんと再会するまでの16年は 無限のように長く感じたけれど。
一緒に過ごす時間は 流れるように過ぎていく。
いつも智くんに支えられて。
気付いたら、2児の母になっていて。
『智くん、ごめんね。まだ頼りない私で。子供達と同じように、智くんを待っているばかりの私で。でも 少しずつ しっかりするからね。たまには、智くんが甘えられるように。ゆっくりだけど、成長するからね。』