「いい時期だと思うの。絵里加の入学と 引越しと バタバタしている間に 全部が上手く落ち着くわ。」私は言う。
自分にも 言い聞かせるように。
「ありがとう。麻有ちゃんの理解があって俺 本当に助かるよ。正直 気持ちは固まっているんだ。あとは時期だけで。上司に相談してみるよ。」
こんな風に 何でも話し合えることが 私を安定させてくれる。
前向きに 笑顔で暮らすことができる。
「あ、そうだ。」私は 智くんの隣から立ち上がり 預金通帳を持ってくる。
「これ。智くんから頂いた生活費と 私が仕事していて時のお給料。お父様達の援助があったから こんなに貯まっているの。」
結婚した時に 智くんから預かった金額の10倍近く増えた定期預金。
「えー。麻有ちゃん こんなに貯めていたの?」智くんは 驚いた声を出す。
「仕事変わって お給料減っても。もし何もかも失っても 当分は大丈夫だよ。」
私は、得意気に微笑む。
少しでも 智くんの不安を取り除ければという思いで。
「驚いたなあ。子供達にも お金かかるのに。すごいよ。」
まだ 驚きが消えない智くんに、
「賞与が年々 増えていたから。智くんが頑張ってくれたから。それに私 ケチじゃないでしょう?結構、贅沢もしているし。」
「まいったな。やっぱり麻有ちゃんには 敵わないよ。経理にスカウトしたいくらいだよ。」
智くんは、苦笑しながら言う。
「でも お父様の援助があったからだよ。住居費だけじゃなく 子供達の教育費も お父様から頂いているでしょう。今度の絵里加の納入金も お父様が支払いしてくれたし。」
「麻有ちゃん、ありがとう。本当に俺 麻有ちゃんと結婚できて よかった。子供達のしつけも 俺の親との付き合いも ちゃんとしてくれているし。いつまで経っても可愛いし。」
智くんは、私を抱き寄せる。
「お値段以上かな。」
智くんの胸に ぎゅっと顔を付けて 智くんを見上げる。
「まいったなぁ。」智くんは 私の唇を激しくふさいだ。