絵里加が、小学校の高学年になる頃、
 
「小さな頃から、きちんと躾をして 大切な事は教えたから。もう、何も言わなくても大丈夫。自分で考えて行動するから。」

と、智くんに言われた。
 
元々、手のかからない 子供達だったけれど。

口うるさく言う親ではなかったけれど。

でも、子供を尊重する思いは 子供達に伝わった。


逆に子供達が、“ママ、どう思う” と聞いてくるようになった。


信用するから、信用される。

親も、子も。


智くんの思いは ちゃんと子供達に伝わっていた。
 
 

「絵里加、ここで丸いケーキ食べた事も、覚えている?」智くんが聞く。
 
「ケーキ?ううん。それは、覚えていないかも。」

絵里加は、記憶を手繰りながら言う。
 
「そうか。ケーキにろうそくが10本立っていて、不思議がっていたんだよ。」

智くんは優しく言う。
 

「10本のろうそく?全然、思い出さないわ。でも、どうして10本なの?」

絵里加は聞く。
 
「パパとママの、10回目の結婚記念日だったから。」

智くんは、私の方を見て言う。

私も、笑顔で頷く。
 

「そうなの?パパとママ、クリスマスイブに結婚したの?」

絵里加が聞く。
 
「入籍したのが、クリスマスイブなの。結婚式は、4月にしたのよ。」

年頃になった絵里加に、結婚式の写真を見せた事もあった。
 


「じゃあ、今日は、20回目だね。おめでとう。」壮馬が言ってくれる。
 
「ありがとう。20年、早かったわ。絵里ちゃんも壮君も、大きくなる訳よね。」

私は、胸が熱くなる。