軽井沢の家族は、妹が結婚し 家を建替えて両親と一緒に住んでいる。

父は、そのタイミングでクリーニング店を閉めた。

今は、母と二人で 2才になる妹の子供の面倒をみている。
 


妹が4年前に結婚した時、お父様は約束通り 妹とバージンロードを歩いた。


私達と同じ教会での 結婚式を決めた妹は彼と二人、東京に来た。
 

「お父様、お願いがあります。結婚式、一緒にバージンロードを歩いて下さい。」

お父様の家にご挨拶に行き、妹は言う。
 
「美奈ちゃん、覚えていてくれたんだね。ありがとう。でも、それはできないよ。一生に一度の事だからね。お父さんと歩かないとすっと後悔するよ。俺は、気持ちだけで十分だからね。」

お父様は、笑顔で答える。
 

「違うんです。一生に一度の事だから。だから私、どうしてもお父様にお願いしたいんです。でないと、ずっと後悔するから。お父様は、いつも優しくて。お姉ちゃんの妹っていうだけの私も、お姉ちゃんと同じに可愛がってくれて。本当の娘みたいに。私、いつも感謝していたから。東京のお父さんだと思っているから。大好きだから。だから、お父様の手から 私を和哉に渡してほしいんです。」

妹は、涙を流しながら、途切れ途切れに話す。

聞いていたみんなが、涙汲んでしまう。

「美奈子のお父さんにも、許可をもらっています。どうか、お願いします。」

妹の旦那様になる和哉君も、お願いする。
 


妹の一つ年下の和哉君は、中学校の先生をしている。

私達は、別荘に行った時に 何度も顔を合わせていて みんな すっかり仲良しになっていた。
 

「美奈ちゃん、ありがとう。本当に、いいの?」

お父様は、涙を浮かべて言う。
 
「はい。よろしくお願いします。」

妹と和哉君は、揃って頭を下げた。
 


「お母さん、俺の夢が 一つ叶うね。」

お父様の謙虚で温かい言葉に、私も顔を覆ってしまう。


だからみんな、お父様を好きになる。