「壮馬も、この前 賞を取ったよね 水泳で。二人とも 運動神経いいね。」
樹君は、明るく話す。
「うん、自由形で3位に入賞したよ。」
壮馬が得意気に言う。
10月の都の大会で。
その時も みんなで声が枯れる程、応援した。
「ご褒美に、新しい自転車、買って頂いたのよね。お祖父ちゃまに。」私が言う。
「5段変速だよ。超カッコいいの。」壮馬は嬉しそうに言う。
「それに乗って、スイミングに行くの?」翔君に聞かれて、
「盗まれると嫌だから スイミングは、古い方に乗って行くよ。」
と言う壮馬に、大爆笑になる。
「私に似て、貧乏性なのよ。」私が言う。
「麻有ちゃん、貧乏性なの?」樹君に言われる。
樹君達は、私のことを “麻有ちゃん” と呼ぶ。
ずっと小さい頃から。
私の希望で、今もそのまま呼んでもらう。
「そうよ。壊れないと、捨てられないの。」
「そう言えば、壮馬の家のテレビ、古いよね。大きいだけで。」翔君が笑う。
「うち、あんまりテレビ見ないから。全然壊れないよね。」絵里加が答える。
子供達の言葉に みんな はっとして顔を見合わせる。
「そう言えば、麻有ちゃんの家で テレビが点いているの 見たことないわね。」
お姉様が言い、お母様も頷く。
「うち、みんながおしゃべりだから。テレビまで点いていると、うるさくて。」
私の言葉は、言い訳のようで。
「そろそろ、買い替えた方がいいよ。今のは高性能だから。」
お兄様の言葉に、樹君達は頷く。
「じゃあ、絵里加がテストで一番になったら、ご褒美に買う?」智くんが言う。
「絵里加、テレビ、今のでいいから。大丈夫だから。」
慌てて手を振る絵里加に、みんなが笑う。