帰り通、樹君達を呼び出して みんなで夕食を食べる。
絵里加の舞台デビューのお祝いだからと ホテルのレストランで。
みんな少しずつ興奮していて。
絵里加の成功を、誇りに思っていて。
「絵里ちゃん、あんなに上手だと思わなかったわ。後ろに座っていた人も あの子凄く良いね、って言っていたわよ。」
お母様が言ってくれる。後ろの声は、私も聞こえていた。
「本当?良かった。絵里加ね、オーディションをしないで 役をもらったでしょう。絶対成功したかったの。」
公演前から絵里加は、ずっと言っていた。
絵里加を選んでくれた先生のためにも、頑張ると。
「足のまめが痛くても、練習 休まなかったしね。」智くんが言う。
「そうなの?絵里ちゃんは、本当に我慢強いから。」お母様の言葉に、絵里加は笑う。
「絵里加、もうすぐ中学生だもの。そのくらい我慢できるよ。」
「頑張り屋だなあ、姫は。将来、バレリーナになるの?」樹君が聞く。
「ううん。プロにはならないわ。絵里加程度じゃ、プリマにはなれないし。」
絵里加は、大人びた答えをする。
「さっき先生に 絵里加は本番に強いし 天性の華があるって 言って頂いたのよ。」
私は、ちょっと自慢気に言う。
みんなも大きく頷いてくれる。
「バレエは好きだから 趣味で続けるけれど。プロになっても 世界的なバレリーナにはなれないもの。」
絵里加は現実的だった。
「バレリーナになるなら、プリマっていう姫の発想がすごいよ。」翔君が笑う。
「だって。どうせやるなら、なりたいでしょう。」
絵里加は、頬を膨らませる。
そんな姿は、まだあどけなくて。