この一年で身長が伸びて、娘らしくなった絵里加。
すらっと手足が長く小顔の 現代風の体型。
豊かに愛されて育った上品な雰囲気が 可愛らしい顔立ちを引き立たせて とても美しい少女に成長している。
「中身はまだ子供なの。今でもよく、パパに抱っこしているのよ。」私は笑う。
パパだけでなく、私の膝に乗ってくることもある。
そんな時、私は絵里加を抱きしめる。
溢れる愛しさで。
過渡期のアンバランスな危うさは、時に危険なほど美しい。
「智之は甘いから。まさかお風呂まで、一緒に入ってないでしょうね。」
お母様に言われて、私は笑う。
「さすがに、それはね。でも朝は今でも キスして見送っていますよ。」
「絵里ちゃんも壮君も、本当にパパが好きよね。まあ、智之さんが それだけ可愛がっているから。」お姉様は 一人で頷く。
「タッ君達も、よくお兄様とじゃれ合っていますよね。三人兄弟みたいに。」私が笑うと
「そうなのよ。大きな体で、くっ付いているから。暑苦しいのよね。」
お姉様は、お母様の方を見て言う。
「そうそう。紀之も 段々本気になって 叩き合いしたりね。紀之達を育てている時 お父さん あまり家にいなかったでしょう。だから、紀之達が羨ましいみたいよ。」
お母様は、笑いながら、段々しんみりと言う。
「智之さんの、働き方改革のおかげね。」
智くんは、無駄な残業を減らすように指導していたから。
商社にいた時のように。
仕事は定時で仕上げてこそ 有能だというのが 智くんの持論だった。
「昔みたいに 遅くまで仕事する事が 頑張る事っていう時代じゃないからね。」
お母様も大きく頷く。
「それに、今 すぐに訴えるとか言う人もいるから。過剰労働とか言って。」私も言う。
「おかげで、子供達とベタベタできるし。でも男の子は父親が大事だから。家にいて 子供達を見てくれると安心するわ。」
お姉様は私よりも責任を感じているだろう。
樹君を、後継者に育てる為の。
樹君は、みんなの期待に負けない 明るく真っ直ぐな青年に成長している。
大らかで リーダーシップもあり お兄様の跡継ぎに ぴったりだと思う。
翔君は頭脳派で 医学部を目指しているらしい。
繊細で観察力の鋭い翔君には それも合っていると思う。
翔君を医師にする財力は十分にあるから。
子供達が それぞれ健全に成長していることは 家族みんなの喜び。
みんなが それを願って 丁寧に愛情を注いで 子育てをしてきたから。
お母様がよく言う、内助の功。
私も少しはわかったような気がする。
智くんが、安心して仕事をする為の 私のするべき事。
結婚して15年。
私達は、信用と愛を深め さらにかけがえのない存在になっていく。