「美咲のところは、二人目はどうするの。」
「それが問題なのよね。目下最大の。」美咲は笑いながら言う。
「詩帆には、兄弟を作ってあげたいわ。でも私が仕事を続けるなら、無理だと思う。私達いい年だから。産むなら急がないといけないし。」
美咲は、真剣に言う。
「そうよね。簡単に産んだ方がいいよ、とは言えないよね。私、専業主婦でも実家に頼っている訳だから。」私も言う。
「ただ、考え方だよね。価値観て言うか。そこまでの生活を望まなければ、美咲が仕事を辞めて、二人目を産めるじゃない。ご主人だって、十分収入がある訳だし。」
私は、慎重に言葉を選ぶ。
「旦那は、そう言うのよ。マイホームも中古マンションでいいし、子供も公立でいいって。二人目が生まれたら 私は仕事を辞めて当分 育児に専念して 子供の手が離れてから、また仕事を探せばいいって言うの。麻有子、どう思う?」
美咲に聞かれて、私は真剣に答える。
「私、普通の家庭で育っているから 斉藤主任の考えも 共感できるけど。でも、東京で生活していると、複雑だよね。一流企業で働いている訳だし 少し上の生活がしたいわよね。」
私も、智くんが普通のサラリーマンだったら、同じ様に悩んだと思う。
「私、田舎では 勝ち組だから そういう暮らしをしたいじゃない。実際、できない訳じゃないし。でも 旦那の意見もわかるの。子供は財産だから、見栄より大事だって言うの。」
私は ふと思い出す。
壮馬が産まれた時、やっと家族になった気がした事を。
それまでは、夫婦と子供だった。
そして今、子供達は 兄弟がいることで 多くを学んでいる。
競争、順番、譲り合い、思いやり。
教えなくても、自然と覚えていく。