例年より早く開花した桜が すべて散った頃 絵里加の入学式は行われた。
新しい制服を着た絵里加は どことなく大人っぽい。
この日は 智くんも仕事をお休みして 3人で式に向かう。
これから始まる絵里加の学校生活が 楽しく 充実することだけを願いながら。
翌日からの通学は 毎朝、樹君達が迎えに来て一緒に登校してくれる。
私も絵里加も とても心強い。
下校は 時間が違う為 一人で帰って来なければならない。
心配した一日目、絵里加は元気よく、
「ただいま。」とインターフォンを押した。
「絵里ちゃん、お帰り。」
玄関を開けて、思わず絵里加を抱きしめた。
「帰り通、迷わなかった?大丈夫だったのね?」
笑顔の絵里加に 私の方が 涙汲んでしまう。
「あのね、お友達ができたの。同じバスだから 一緒に帰ったのよ。」
絵里加は、楽しそうに話してくれる。
「よかったわね。何ていうお名前?」
「福田陽子ちゃん。絵里加と同じ 渋谷駅で降りるの。」
私は、絵里加と一緒に2階に上がり 着替えを手伝ってしまう。
「ママ、絵里加 一人でできるよ。もう一年生だもの。」
絵里加に言われて、
「そうね。でも絵里ちゃん ママ寂しかったから 少し抱っこさせて。」
脱いだ制服を きちんとハンガーに掛けた絵里加に言う。
絵里加はニコッと笑って、私の膝に乗る。
「絵里ちゃん、偉いわ。遠くの学校から、ちゃんと帰って来られたのね。」
私は、絵里加の頭に顔を寄せて しばらく抱きしめた。
子供の匂いが、私の心を癒してくれる。