絵里加が赤ちゃんの頃も 智くんは よく動いてくれた。

『俺も、母乳以外は何でもできる』と言って。

絵里加をお風呂に入れて、私が母乳をあげ終わると 絵里加を引き受けて寝かせてくれた。

おかげで私は、いつもゆっくりお風呂に入ることができた。
 

絵里加も壮馬も 生まれたばかりの 夜中に授乳をしていた時は 一緒に起きて おむつ替えをしてくれた。

いつも、共有してくれたから。

一人で育児をしていると思わなかったから。

とても感謝していたから、愛情は深まった。

だから、抱かれたいと思えたのかもしれない。
 


「信じられない。すごく良いご主人だね。そんなに大切にされれば、ラブラブでいられるよね。」

美咲は、驚いて言った。
 
「そうだね。だから私も 智くんの為に できる事を頑張ろうって思えるし。お互い様だから。美咲達も、どこかで回転を変えれば大丈夫だよ。斉藤主任、優しい人だもの。」
 
「前みたいに、好きって思えるのかな。」

美咲は 不安そうに言う。
 
「一度リセットすれば もとに戻ると思うよ。好きだった時を思い出せば。」
 
「麻有子って、意外と前向きだよね。」美咲は笑う。
 


「でもね、私も努力しているよ。智くんが帰る時は ちゃんとお化粧して きちんとした服で迎えるし。あと毎日 智くんの靴を磨いたり、スーツにスチームしたり。」

美咲は、驚いて固まる。
 
「驚いた。私 出かけない日は スウェットのままだし 顔も洗わないよ。麻有子、偉いね。やっぱりちゃんとしているわ。」
 

「顔も洗わない美咲を 抱いてくれるなんて ありがたいじゃない。冷たくしたら、罰が当たるわよ。」

私達は、声を上げて笑った。