美咲の言葉は、辛辣だけれど温かくて とても楽しい。

今は、子供の事が 一番興味があるようで。

絵里加が受験に合格するまでの事を、詳しく聞きたがる。
 

「そんなに習い事しないと無理なの。私が働いていたら とてもできないわ。」

私が絵里加達の習い事について話すと、美咲は驚いた声を出す。
 
「うちは、お姉様に勧められて、同じようにしているの。でも、そこまでしなくても 合格する子はするし。大丈夫じゃない。」私は答える。
 
「私が、仕事を続けるなら 詩帆の小学校は やっぱり公立なのよね。私立だと 学童保育もないでしょう。私が仕事を辞めると 時間はできても 経済的にきつくなるから。」

美咲は、諦めたように言う。
 

「でもね、それも有りだと思うわ。中学になれば その子の性格とか得意な事も わかるじゃない。それに合った学校を選べると思うの。子供にとっては、その方が良いかも。」

私も、お父様からの援助がなければ 小学校は 公立でいいと思っていたから。
 
「絵里加達はね、お父様達の希望もあったし。甥達も通っているから。結構なプレッシャーよ。次は、壮馬がね。」

それが、廣澤家の一員としての努力。

公立の小学校では学べない、特権階級の生活をさせるための。


「そうか。セレブにはセレブなりの苦労があるのね。」美咲は笑う。
 
「そう。私は、玉の輿だから。」私も笑って答える。
 

「自分で言う?」と美咲は呆れて笑う。
 
「お姉様と “玉の輿バンザイ” って言っているの。お姉様も、サラリーマンの家から お嫁に来ているから。」
 

「何か、いいわね。素敵なお姉さんじゃない。」

美咲は、ほのぼのとした笑顔で言う。
 

「私、とても裕福で 良い生活をさせてもらっているでしょう。でも 子供達には その分色々な経験をさせて 一流に育てないといけないって思っているのね。それはそれで責任重大よ。」

こんな話しができるのは、美咲だから。

智くんと私の経緯を 全部知っているから。
 

「そうよね。医者と結婚した友達が 子供を医者にしなければいけないって言っていたわ。同じよね。」

美咲は、わかってくれる。


美咲のように、二人で築きあげる生活が 一番幸せなのかもしれない。


でも、みんな気付かない。自分の幸せには。
 

「私、智くんにも 家族にも 恵まれたから。だから、努力できるけれど。違う人達だったら、無理だと思う。いくら裕福でも。」

私の言葉に、美咲は大きく頷いた。