「すごい。素敵なおうち。私達には、夢のまた夢だわ。」
渋谷駅まで迎えに行って 家に着くと美咲は言う。
「お父様の物だから。私達だって 自分では買えないわ。」
リビングを キョロキョロと見回し、美咲はため息をつく。
「だからさ、麻有子達の為にって 買える親がすごいのよ。」
美咲は今、豊洲の賃貸マンションに住んでいる。
ご主人も美咲も 一流企業勤めだから 収入も高い。
生活に不自由する事は ないだろう。そう言うと、
「まあ、世間一般で見れば 勝ち組だと思うけど。そこまでよ。それに いつまでも賃貸に住んでいられないし。早いうちにローンを組んで マンションでも買わないと。」
美咲は、投げやりに答える。
「詩帆は、4月から保育園なのよ。まだ1才にならないけれど このタイミングで入れないと 職場復帰できないから。」
美咲の言葉を、私は真剣に聞く。
「私達、両方実家は地方でしょう。親には頼れないし。私は当分、時短勤務になるの。」
それでも、共働きができるのは 会社の福利厚生が整っているから。
だから豊かな生活を維持できる。