「お姉様とお兄様は、どこで知り合ったのですか?」

妹は、興味津々で聞く。
 
「私、大学卒業して 銀行で働いていたのね。そこに 紀之さんが来たの。」

お姉様は、楽しそうに話す。

私も、初めて聞く話し。
 

「えー。それ、お兄様の 一目惚れ?」

妹の言葉に お姉様は笑って首を振る。
 
「廣澤工業の取引銀行だったから。紀之さんは、入社4年目で 工場から内勤に回って、色々 勉強していた頃で。私 よく窓口で対応したの。それで ある時 食事に誘われたの。」

お姉様は、懐かしそうに話してくれる。
 

「わあ。やっぱり一目惚れだ。」妹は言う。
 
「私、断っていたのよ ずっと。でもある時 帰りにばったり会って。お茶でも って言われて。それが始まりかな。」


「それ、ばったりじゃなくて お兄様の待ち伏せですよね。」

私も、笑顔で言う。

お姉様は そうよね、という顔で 微笑む。
 


「私、その頃 彼と別れたばかりで。つい紀之さんに 携帯番号を教えたの。そうしたら まめに連絡してくれるのよ。それで 自然と会うようになって。」

お姉様との馴初め。

お兄様は きっとお姉様の人柄を見抜いたのだろう。
 

「お兄様、積極的。やっぱり お姉様美人だからなあ。いいなあ。」

妹は、羨ましそう。
 

「私、最初から 紀之さんは廣澤工業の人だって知っていたじゃない。会っていくうちに、結構辛くなってね。遊ばれているのかなって思ったり。」

お姉様の言葉に頷く。
 
「私も、智くんとの結婚は 無理だと思っていたわ。」私は言う。