でも、お母様が入った高級ブランド店に さすがの妹も 声が出ない。

智くんと私の婚約指輪を買ったブランド。

恐ろしく贅沢な。
 

「昨日、お父さんと見たの。智之達の指輪も、ここのだから。どうかしら。」

お母様は、簡単に言うけれど。

二人の時計を買ったら、新車が買えるくらいの値段。
 

「こんな高価な時計。セキュリティ付けないとはめられないわ。」

値段に驚く私の声に、お母様とお姉様は 心地よく笑う。
 

「麻有ちゃん、私達のも、同じくらい高価だから。」

とお姉様は、自分の腕を見せてくれた。

それは、高級時計メーカーの物。
 

「紀之達と同じっていうのも、つまらないでしょう。お父さんは、麻有ちゃんには あれがいいかな、って言っていたの。」

お母様が指差した時計は、四角の文字盤にシルバーのブレス。

文字盤の周囲をダイヤが覆っている豪華で可愛い時計。
 

「ああ、似合いそう。麻有ちゃん、色白だから。」

ケースから出してもらい、腕に着けてみる。

婚約指輪と重なって、豪華で上品で。
 

「智之次第だけど。一応、候補ね。」
 

次に入ったお店は、高級時計メーカーで。

値段は同じくらいだけれど、デザインがもう少し堅い。
 

「私は、さっきの方がいいと思う。」

お姉様が言い でしょうと頷くお母様。
 
「値段に驚いて、声が出ないわ。」

と母が言うと、妹も同意する。
 

「一生物だから。買える時に、買ってあげたいの。」

お母様は、優しく私を見た。

お父様とお母様が、それを望んでいるなら 私達は喜んで 買って頂こう。

そして、時計に見劣りしないように 自分を磨こう。


私は、笑顔でお母様に頷いた。