観光から戻って 夕食までの間 お兄様と智くんは 子供達とプールに入る。
 
「本当に元気よね。紀之達も。」お母様に笑われて。
 
「みんなで買い物してきたら。」

お父様の言葉で、女性5人で出かける。
 

「智之達、結婚10周年だから、二人に腕時計を買いたいの。下見をしましょう。」

と言うお母様。
 
「そんな。ハワイが記念旅行だから。何もいらないです。」

私は、本心から言う。
 
「紀之達の時も、買ったのよね。」

お母様はお姉様と、頷き合い、
 

「子供達の成長に、私達が買いたいのよ。遠慮しないで、貰ってね。」

お母様は、嬉しそうに言ってくれる。
 


私は元々が 堅実だけれど 智くんと結婚してからは より一層 物欲がなくなっていた。

特に子供が生まれてからは 物を買ってお金を使うよりも 何かを体験することに お金を使いたいと思っていたから。
 

でも それは、欲しい物が無いほど 満たされている証し。


必要な物は、すべて上質なもので 揃えることができたから。
 


「麻有ちゃんは、買い物苦手だから。沙織ちゃん、一緒に選んでね。」お母様は笑う。
 
「いいなあ。お姉ちゃん。」

妹は、ニコニコと私の肩を叩く。

それは、今持っている時計は 私が引き受けるよ、という顔で。