「紀之さん、会社を独り占めしているってずっと気にしていたから。」

お姉様が言う。


智くんも私も、驚いて顔を見合わせる。
 
「そんな事、思っていたの?俺は、自分が勝手な事しているって思っていたのに。」

智くんは、素直に言う。
 

「最初に俺が 会社に入ったから 智之は遠慮して 就職したんだろう。ずっと 気になっていたんだよ。」

お兄様の言葉に、涙が滲んでくる。
 

「そんな風に思った事ないのに。俺は 自由に 気楽なサラリーマンで。でも お父さんから援助してもらっていたから。いつも悪いって思っていたのに。」

智くんの、正直な気持ちは 私と同じだった。
 

「いつか、必要とされたらいいなって。その時は 力になりたいって 思っていたから。遅くなったけれど、これからは 頑張るよ。」

素敵な兄弟。


お父様とお母様も、しんみりと聞いている。
 


「本当に素晴らしい息子さん達ですね。素直で、思いやりがあって。俺は、智くんを選んだ麻有子の、人を見る目が誇らしいです。」

父が、お父様に言う。

「話すことって、大事だね。こういう家族にしてくれた沙織ちゃんと麻有ちゃんに、本当に感謝するよ。」

お父様の言葉に、私は顔を覆ってしまう。
 

「麻有ちゃんは 泣き虫なんだから。だめだよ お父さん。」

お兄様が言い、温かな明るさに包まれる。