「沙織が見つけたんだよ。智之達にピッタリだって。俺達は　もう内覧もしたけれど。なかなかいいよ。」

お兄様が笑顔で言う。
　

「全然、考えてなかったからなあ。マンションでも　特別不便な事はないし。」

智くんも私も　本当に驚いていた。
　
「あなた達　のん気だから。こっちはみんなで探していたのよ。」お母様が言う。
　
「私達も　智之さん達が近くに住んでいたらいいな　っていつも思っていたの。近ければ　絵里ちゃんも樹達と通学できるし。」

お姉様がお兄様と頷き合いながら言ってくれる。
　


「麻有ちゃん、どう？」智くんは　私に聞いてくれる。
　
「すごくありがたいお話しです。急だから夢みたいで。」

私が言うとみんなが笑う。
　


「近くなれば　俺達も安心だよね。」と智くんが私に言う。
　
「はい。子供が病気の時とか。すごく助かります。それに絵里加の通学も。タッ君達と一緒なら、本当に安心です。」私も答える。
　


「じゃあ　見に行ってみるか。内覧して　気が進まなければ　断っていいんだからね。」

お父様の言葉に
　
「お祖父ちゃま。絵里加　お引っ越しするの？」と

絵里加が静かに聞く。
　

「おうちを見てからね。みんなが気に入れば　そこが絵里加姫の　新しいおうちになるよ。この家の近くだからね。」

お父様は　ちゃんと絵里加に話してくれる。
　

「絵里加　絶対に気に入るよ。お祖父ちゃまと　もっと遊べるもの。」

素直な絵里加の言葉に　みんなが爆笑する。
　



「みんなで、おうち見に行こうか。」お父様の声に　奥から男の子達が出てくる。
　
「壮君達のおうち？」樹君が聞く。
　
「そうよ。そこ片付けて　お出かけの用意をしてね。」

お姉様が言うと　子供達は素直に動きだす。

そして　大勢で賑やかに　出かける。

ずっと変わらない　幸せな時間が続いている。
　


「絵里加　お祖父ちゃまと手を繋ぐ。」
　
「壮君は　タッ君とカッ君の真ん中。」
　
「車、気をつけてね。」家族が増えて。

みんなが歳を重ねて。でも　優しさは変わらず。

豊かさが優しさを増やし　優しさが　さらに私達を豊かにしていく。


私は、１０年前よりも、きっと綺麗になっていると思った。