昼食は、全員で食べに行くことになっていた。
お昼少し前に お父様達が迎えに来て みんなで賑やかに歩きだす。
他愛ない事を それぞれに話しながら みんなが笑顔で。
レストランまでの道さえも 楽しくて。
これから始まる旅行が どれほど楽しくなるか 期待でいっぱいになる。
しばらく和食は食べられないからと、お母様は 天ぷらのお店を予約してくれた。
案内された個室に落ち着くと
「この度は、本当に ありがとうございます。お言葉に甘えて お世話になります。」
と父が、きちんと挨拶をする。
「こちらこそ。いつも別荘で、お世話になっていて。お礼もできないままでしたから。ご一緒できて、良かったです。むこうでは、ゆっくりしましょう。」
お父様も気さくに、答えてくれる。
「それに 新しい家 とても立派で。麻有子は本当に幸せです。」父が言うと
「絵里加が入学する前には、と思っていたんですが なかなか物件がなくて。でも、間に合ってよかったよね。」
お父様は、お兄様と智くんを見て言う。
「智之達、不満も言わずに ずっとマンションに住んでいるから。今回の家も俺達が見つけて、提案したんです。」
お兄様が、父に言ってくれる。
「本当に、我慢していた訳じゃないんだよね マンションも。」智くんは、私を見る。
「はい。あのマンションだって、私達には贅沢だと思っていたから。」私の本心だった。
「欲がないのよね、この人達は。」お母様が笑顔で言う。