しばらく 他愛のない話しで 笑い合った後で
「智之達、松濤へ引っ越す気はないか。」
絵里加を抱いたまま お父様が言う。
「いくら絵里加が可愛くてもね。兄貴達を追い出す訳にはいかないでしょう。」
智くんはケラケラと笑う。
「この家じゃないよ。2丁目なんだけど 売りに出ている物件があるんだよ。近くの方か 何かと便利だし。ずっとマンションって訳にもいかないだろう。」
智くんと私は、顔を見合わせてしまう。
お母様も お兄様達も知っていたようで 笑顔で聞いている。
お父様に抱かれた絵里加は お父様の指を触りながら 静かに聞いている。
大人が話している時に うるさく割込むようなことはしない。
「建物は築10年で 綺麗だし。大きくはないけれど 4人で住むには丁度良いよ。ちょっとこれから 見に行ってみないか。」
「簡単に言うね。俺達に買える値段じゃないでしょう。」智くんは、苦笑する。
「俺が買うんだよ。いずれ相続すればいいだろう。絵里加姫が小学校に入るまでには って探してはいたんだけど。なかなかこの辺は 出なくてね。その物件は 持主が海外に移住する為に やむなく手放すらしいんだ。本当に、いいタイミングだったよ。」
智くんも私も意外過ぎて 言葉が出ない。