智くんに次いで 上がっていったお父様とお兄様の 歓声が聞こえる。

お母様とお姉様は私を見る。
 
「また麻有ちゃん、驚かしたのね。」と笑う。

私と一緒に玄関にいた絵里加が 得意気な笑顔を 私に向ける。
 

「すごい、ご馳走。これ全部 麻有ちゃんが作ったの。」お姉様の声に、
 
「みんなで作ったの。みんな、お手伝いしたのよ。」と絵里加が言う。
 
「絵里ちゃんも、壮君も?ありがとう。」お母様が 優しく言ってくれる。
 


クリスマスだから、ノンアルコールのシャンパンで乾杯して。

あとは、みんなが好きなように料理を取って。


賑やかで、楽しい食事会。


料理は、どれも好評で。

美味しいと言ってもらうと お手伝いした子供達の アピールが止まらない。

何故か、智くんまで。
 


「麻有ちゃんの引出しの多さには、本当に驚かされるね。」

何度も おかわりを取りながら お兄様が言ってくれる。
 

「そんな事ないです。量が多いから、見映えがするだけで。簡単な物ばかりだから。」
 
「そうだよ。このラザニアだって、市販のソースと餃子の皮だからね。」

担当した智くんが、説明する。
 


「智之が、料理をするとは。驚いたね。」

お父様は とても満足そうに笑う。
 
「やればできるよ、誰だって。やらないだけだから。」智くんは 笑う。


結婚前から、一緒に料理をしてくれた智くん。

今は、簡単な昼食くらいは 一人で作れる。
 

「ちょっと、聞いた。紀之さん。」とお姉様に睨まれて、
 
「だって 邪魔だから 向こう行けっていうじゃない、いつも。」とお兄様が言う。
 
「本当に、邪魔しかしないんだもの。ザルとボウルも間違えるし。」

お姉様は お兄様に言った後で
 
「麻有ちゃん、よっぽど根気よく教育したのね。偉いわ。」と笑う。
 

「そうでもないよね?俺 優秀な部下だから。今は、新人の指導もしているし。」

と智くんは、膝に座る 壮馬の頭を撫でる。
 
「壮君は、まだお手々が小さいから。いつも、仕上げをするの。」

壮馬も得意気に言う。
 
「絵里加は、年長さんだから 包丁もできるよ。」

絵里加もアピールする。

みんなお父様達が大好きだから。自分を認めてほしくて。


そう思える家族がいることが、私はとても嬉しかった。