送別会で 帰りが遅くなる智くんに代わって 二人をお風呂に入れて 寝かしつける。
久しぶりに 子供達と入るお風呂。
大変だけれど 楽しくて。
私が髪を洗っていると 背中にお湯をかけてくれたり。
いつも優しさを教えてくれる智くんに 感謝の気持ちでいっぱいになる。
温かい気持ちで待っていると 豪華な花束を抱えた智くんが 帰ってきた。
「おかえりなさい。智くん、お疲れ様でした。」
玄関先で、私は智くんに抱きつく。
「ただいま。麻有ちゃん、ありがとう。」
花束を持ったまま、智くんは 私を抱きしめてくれる。
「すごいお花。いい香り。」
受け取った花束に 顔を付けてみる。
「辞めるとなると、やっぱり寂しいね。15年もいたからね。」
ソファに座る智くんの前に コーヒーを置いて。
私は正面から、智くんを抱きしめる。
いたわりと、賞賛と、感謝を込めて。
智くんは、私の胸に頭をつけて 私の背に腕を回す。
私達は 満ちてくる愛を チャージするように ただ、じっと、黙って抱き合う。
しばらくして、私を離した智くんは、
「今、すごい幸せが来たよ。心が合体したね。」と微笑む。
「智くん、ありがとう。」
智くんの隣に 腰を下ろして そっと言う。
「しばらくは 麻有ちゃんに 苦労をかけるけど。力を貸してね。」
智くんは、私の手を取って言う。
「もちろん。毎日、麻有子パワーをチャージするからね。」
私は、人差し指を伸ばして 智くんの指先に付ける。笑顔で。
「あっ。来てる、来てる。」
智くんも指を伸ばして笑う。
「私、何も心配してないの。だから、智くんも 心配しないでね。」
“ピーッ”と言って指を合わせながら 私は言う。
「ありがとう。パワーが湧いてきた。」智くんも笑う。
優しい、素敵な笑顔で。